日本の民間銀行

世界各国の多くの銀行が気候変動に伴うリスクを認識しているなか、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)および三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)などの日本の大手銀行はこの世界の潮流に逆行しています。

民間銀行は、世界中の石炭関連投融資における主要なアクターです。特に日本のメガバンク3行(みずほ、SMBCグループおよびMUFG)は、石炭産業への融資において世界第1位、第2位、第3位となっており、その額は過去2年間で約613億ドルに上りました。さらに「化石燃料ファイナンス成績表2021」報告書によると、石炭火力発電企業トップ30社への投融資においては、過去5年間で三菱UFJが世界第12位、みずほが第13位、三井住友が第22位となっています。

地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるというパリ協定の目標を達成するためには、銀行セクターは新規の石炭火力発電事業への資金提供をやめなければなりません。しかし日本の銀行は未だに、最も多くの二酸化炭素を排出する燃料である石炭を積極的に支援しています。

これらの銀行の取り組みには、いくつかの小さな進展はありましたが、なすべきことはまだ山積みです。 2018年にメガバンク3行はそれぞれ石炭関連投融資に関する方針を発表し、また2019年に三菱UFJとみずほが、2020年にみずほとSMBCが、2021年に3行全てがさらなる方針改訂を行いました。しかしこれらの方針はCCUSや混焼といった新しい技術を装填した石炭火力発電所を対象外とする抜け穴を残している。これらは2030年までの排出削減に寄与しないため、石炭火力の延命につながり、パリ協定の目標と整合しません。また、みずほは石炭火力発電を主力事業とする顧客に対する移行リスクのエンゲージメントを強化する方針を発表しましたが、他の2行も含めて、石炭火力を開発する企業への投融資を継続する可能性を大きく残しています。

銀行が途上国を石炭問題に縛りつけている

日本の銀行はインドネシアやベトナムなどの国々の石炭火力発電事業を後押ししているだけでなく、さまざまな国の炭鉱事業も支援しています。

これは極めて有害な結果をもたらすと科学者は指摘しています。ハーバード大学の研究では、東南アジア諸国の早期死亡者数は、石炭の拡大による大気汚染を原因とするものだけで、2030年には年間約7万人になると推定されています。

インドネシアでは、日本が出資する石炭火力発電所の影響を受けた地元住民が、土地収奪や生計手段の喪失、健康への影響などの問題を報告しています。異議を申立て事業を中止させるために裁判に訴える住民もいます。例えば、日本の銀行などが出資するジャワ島のバタン石炭火力発電事業がその例です。この事業は当初、日本のクリーン・コール・テクノロジー輸出の「モデル事業」だとされました。しかし事業の進行とともに、技術が満足と言えるものではないことが明らかになりました。同発電所から排出される大気汚染物質の量は平均で、日本国内の石炭火力発電所の5倍にも達すると予測されたのです。

同様の問題は、日本の民間銀行が出資する他の複数の事業についても報告されています。

日本の民間銀行の新しい石炭方針はどうなっているのか?

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2021年4月に石炭関連の方針を改定し、新設の石炭火力発電のみならず、既存発電設備の拡張にもファイナンスは原則として実行しないことを宣言しました。しかしMUFGは、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合があります」と例外を残しています。CCUSも混焼も2030年までの削減にはほとんど寄与しないと考えられており、石炭火力を延命することにすぎない技術であり、これらの技術への支援はパリ協定と整合しません。

また同行は、2021年5月の方針改訂で邦銀として初めて「2050年カーボン・ニュートラル宣言」を発表しましたが、2030年の中期目標の発表は来年度中としました。

なお同行は、2020年10月公表のサステナビリティレポートの中で、「2040年度に石炭火力発電所向け与信残高をゼロにする」という、みずほ、SMBCと同様の目標を掲げました。

 

みずほは2020年4月に石炭関連の方針を改訂しました。新方針では、「石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資等は行ないません」と表明し、石炭火力発電所向け与信残高を2050年度までにゼロとすることを発表しました。(同年6月の株主総会で2040年度までに達成する旨発言し、2021年5月の改定で明記。) 但し、2021年5月の改訂方針発表後も、「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠であり、かつ、温室効果ガスの削減を実現するリプレースメント案件」(既存発電所の置き換え)については例外扱いしています。

みずほファイナンシャルグループは2021年の方針改訂で、邦銀として初めて、新規の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする投融資等は行わないと発表しました。しかし、既存の炭鉱採掘については、例外を残しています。同行はまた、石炭火力および炭鉱を主たる事業とする企業の移行リスクに関するエンゲージメントを強化する方針を打ち出し、邦銀として初めてコーポレートファイナンスのセクター方針に言及しましたが、具体的な除外方針が求められます。

なお、2021年6月の株主総会でみずほは2050年カーボン・ニュートラルを目指す旨を発表しました。

 

三井住友フィナンシャルグループ2021年5月石炭関連の方針を改定し、「石炭火力発電所の新設および拡張案件への支援は行いません」と明記し、従来の超々臨界圧(USC)技術などの例外規定を取り除きました。しかし、方針には明記されていないものの、NGOとのやり取りにおいて、「CCUSやアンモニア・バイオマス混焼等、トランジションに資するものについては支援を検討可としている」と明らかにしました。これらの技術はいまだ実用化されておらず、2030年の温室効果ガス半減に寄与しません。

なお、SMBCグループは2020年7月、統合報告書2020の中で、2040年度を目途に石炭火力発電向けのプロジェクトファイナンスの貸出金残高をゼロにするというみずほと同様の目標を掲げました。これらの目標はパリ協定の目標と整合しません。

 

日本の大手銀行は石炭関連の投融資を制限してはいますが、どの銀行の方針もパリ協定の目的と完全に一致するものではありません。なぜならこれらの銀行は、石炭関連事業への支援の継続を可能にする例外事項を方針に設けているからです。さらに、銀行らの石炭関連方針はプロジェクト紐付きのファイナンスにのみ適用可能となっています。つまり現行の方針では、企業への融資や、株式や債券を通じた資金提供は引き続き許されているのです。

No Coal Japan の要望

No Coal Japanは、日本の民間銀行に対して以下を要望します。 

  •     石炭火力発電関連の事業に対するプロジェクトファイナンスおよび新規のコーポレートファインス(融資、株式・債券投資を含む)を直ちにやめること。
  •     すべての銀行の融資をパリ協定に整合的なものへ転換すること。

日本の銀行はすでに再生可能エネルギー融資における世界のリーダーです。気候変動の現状を考えると、石炭及びその他の化石燃料に流れている全ての資金は再生可能エネルギー100%の未来の実現を手助けするために使われるべきです。