保険会社と石炭

世界の大手保険会社は石炭セクターから撤退し始めています。日本の保険会社も今すぐ行動を起こすべきです。

損害保険会社は現代の産業界を低炭素経済への移行を加速させる上で重要な役割を果たしています。多くの石炭事業は、保険の適用や引き受けがなければ、銀行からの融資も受けられず、新規の炭鉱や発電事業に必要な資金を獲得し、政府の許可を得ることは難しいです。また、保険の引き受けなしに、インフラ設備を整えたり、事業運営するといったことはできないでしょう。

保険会社らは何十年もの間、科学的な根拠をもとに、気候変動のリスクについて警鐘をならしてきました。近年、気候変動が引き起こす自然災害による保険会社の損害は急激に増えています。

石炭からの脱却

2017年、世界の大手保険会社が石炭から撤退する動きが始まりました。 2020年12月時点で、石炭事業の保険引き受けを停止、または制限する方針を採択した保険会社は、アクサ、スイス再保険、ハノーバー再保険、チューリッヒなどの業界最大手を含む大手保険会社23社にのぼります。これらの企業は元受保険市場の12.9%、再保険市場の48.3%を占めています。

石炭以外にも、環境への悪影響を及ぼすタールサンド事業への保険引受を停止、または制限している保険・再保険会社は9社あります。石油とガス事業への保険引受を段階的に廃止すると最初に発表した保険会社はオーストラリアのサンコープです(2020年12月時点)。

少なくとも65社の大手保険会社が、投資撤退(ダイベストメント)方針を採用している、または石炭への新規投資をしないと約束しています。

この動きについて、世界的な保険ブローカーであるウイリス・タワーズワトソンは、保険会社らの石炭からのダイベストメントによって、石炭業界が新しい事業に保険をかけることがさらに複雑でその金額が高くなったと述べています。保険業界の化石燃料部門からの撤退の動きは年々加速しています。

日本の大手損害保険会社

日本の大手損害保険会社である東京海上、MS&ADおよびSOMPOは、石炭を含む電力・エネルギーセクターで世界をリードしています。

近年、日本の保険会社は持続可能性の重要性をうたっていますが、それにもかかわらず、気候変動を悪化させる石炭事業の保険を引き受け続けています。

東京海上、MS&AD、SOMPOは2020年9月に石炭火力発電への保険引受・投融資を停止する方針を発表し、原則として新規石炭火力発電事業への保険引受や投融資を行わないと発表しました。しかし、3社の⽅針はいずれも、当該国の政策、エネルギー事情、発電効率等を考慮して保険を引き受ける場合があるとの例外規定を含んでいます。また、⽯炭⽕⼒発電への依存度が⾼い企業や新規⽯炭⽕⼒発電所を計画中の企業向けの保険引受・株式/債券投資、⽯炭採掘や他の化⽯燃料関連事業への保険引受・投資については⽅針を⽰していません。

東京海上

東京海上の方針では、石炭火力発電所については、原則として新規の保険引受およびファイナンス(投融資において)は行わないとしています。しかし、同方針は「当該国のエネルギー政策・エネルギー事情や事業継続の事情等を考慮し、OECD 公的輸出信用アレンジメントなどの国際的ガイドラインを参照した上で、総合的に判断し」引き受けおよびファイナンスを行うことがあるという例外規定を残しています。

MS&AD

MS&ADの方針では、今後新設される石炭火力発電所の保険引受や投融資を原則行わないとしています。しかし、同方針は「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠な場合等については、慎重に検討のうえ、対応することがある」という例外規定を残しています。

SOMPO

SOMPOの方針では、日本国内の石炭火力発電所の新規建設に関する保険引受・投融資は原則として行わないとしています。しかし、同方針は「エネルギー政策等を踏まえた一定以上の発電効率を有する設備については、温室効果ガスの排出削減等の環境負荷軽減対策や代替手段の有無等を確認のうえ、慎重に検討し対応する場合がある」という例外規定を残しています。

 

 

出典:東京海上、MS&AD、SOMPOの保険引受や投融資の方針に関するリリース

また、2020年の世界の大手保険会社30社の石炭・石油・ガスへの保険引受に関するランキングで東京海上、MS&AD、SOMPOはいずれも方針の抜け穴が多きことから30社中18位との結果でした。

私たちの要望

No Coal Japanおよび Insure Our Future キャンペーンは、日本の保険会社に以下のことを提言します。

  • 石炭火力発電事業への保険引受方針から例外規定をなくすこと。
  • 石炭火力発電事業のみならず、石炭採掘、タールサンド事業、石油・ガス事業にも保険引受の制限や段階的な停止をすること。
  • 石炭火力発電への依存が高い企業や新規石炭火力発電事業を計画中の企業に対する保険引受、株式や債券投資を停止すること。
  • 地球の平均気温の上昇を最大1.5℃に抑えることを目指し(1.5℃シナリオ)、事業活動を展開すること。